ボジュレと都大路

10 3 8 8 3 5 5という数字の羅列は一部の人間の
血流を広げて気分を高揚させることができる

高校駅伝の区間だ

これがわからない人間にはただの数字の羅列に過ぎない

だが、わかる人間は議論をはじめれる
どこをどう走りたいか?
自分の仲間なら
今なら

もし昔なら?

高校駅伝の区間配置を前にして
2時間は魚民で飲めるだろう

悔しいと思う人が多いがこれは事実で
悔しいと思うが高校時代という青春は誰にも取り戻せず
青春は人によって様々だが

このゲームは16歳〜18歳である人間にしか体験できない青春である

などという
この私も福岡国際に脚切りのような形でギリギリ出たこのマラソンバカももちろん都大路に立てるような選手ではなかった

高校は田舎の進学校で
高校駅伝は県駅伝が二十番くらいの都どころじゃない学校だ

だがそんな私でも
10 3 8 8 3 5 5の数字は今でも暗唱するだけでビリビリと頭の痛覚神経をしびれさせるものがある

濃度がこすぎる焼酎を
うっかりロックで飲んでしまった時
数秒後に頭痛に近い昏睡がくるあれと同じ痛みだ

今年の都大路は友人の家で観戦した
友人の子供や友人が監督になったチームが出場している
本来であれば、私はプレイヤーではなく
彼等のように青春を謳歌する選手をサポートすべき年齢だ

だが残念ながら彼等と同じく、いつが黄金時代なのではなく
去年フルのベストがでた今こそが私は私の黄金時代真っ只中なのだ

アンカーで重役を引き受けながら引き離される友人の娘を見ながら涙が出てしまった。才能に溢れていてもこの夢舞台は苦しかったのか?そんな事を感じたら感情が勝手に移入してきた

俺は都大路にコンプレックスがある

大学は陸上部250名のマンモス校の陸上部に何とか入った
俺のような弱小選手は浮いて相変わらず先輩には実績がないので邪険にされた

同期でもはじめはそうだった

俺は今でも企画野郎だが
仲のよくない同級生達を悲観してこの時期はクリスマスパーティーを企画する

企画はするが飲んでると劣等感がある
俺は何もやってきてない。らしい

彼等には都大路で華々しく闘った実績があった

毎回クリスマスの過ごし方は
彼等が今では古典になったVHSの都大路ビデオを持ってきて

俺以外の選手が写っているのを見ながら
当時の優秀さを皆で賞賛して速さを舐め合う

俺だけはそこに居ない
俺は都大路にはいない

仲間のためにいつも酒飲みのジジイが好きなボジュレヌーボを買っていった

「初物のワインを仲間の前で空ける男はクールでもてるんだぜ」

俺は一人でいつもそのボジュレを飲むことになった
誰も美味しくない酒を飲まないからだ
誰も酒が無くても酔えたからだ

俺は酒が無くては酔えなかった

だが血はたぎるのだ
俺は彼等の青春を共有出来なかった

高校駅伝への愛を共有出来なかった

だが友人の娘や子供は出来たのだ

羨ましかった

今でも俺は羨ましい

なぜなら

16歳〜18歳の時にしか味わえない青春がそこにある

いま

いまも今でも

福岡国際や陸上に愛を失っていない

俺は永遠に愛をしている

競技場を
フルマラソンを

福岡国際あんなに嫌な大会になっても

41キロしか走れ無くても

感想は愛しか残っていなかった

だが都大路だけはもう永遠に出られない

今は普通のリーマンや
肥満や死んでしまった、同期もいるが

今も俺は全力で走りたい

強くなりたい
速くなりたい

恥ずかしくていい
そのままで、別大で九州製氷にリベンジしたい

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